食品加工残さ飼料の開発(第
2
報)
堀元司・樋田宣英
食品産業 担当Development of Feed of By-products Derived from Food Industry (the 2nd report)
Motoshi HORI
・
Nobuhide HIDA
Food Industrial Gr.要
旨
県内 で 発生 す る食 品 加工 残 さ( 以 下, 「 食品 残 さ」 と いう .) の 飼料 化 に係 る 検討 の 一環 と して 大 麦若 葉 エキ ス抽
出時に発 生する 「大麦 若葉粕 」を対 象とし 飼料化 方法の検 討を行っ た.
成分値等 の調査 を行っ た結果 ,密度 が 29 9kg/m 3
と非常 に軽 く嵩張る 欠点も 見られ たが, 有害成 分含量 はいず れも
飼料 中有 害物 質の 指導 基準 値の 範囲 内で あり 飼料 とし ての 安全 性に 問題 ない こと が確 認で き, 栄養 成分 も一 定程度
含まれる ことが 認めら れたこ とから ,大麦 若葉粕 が有用な 飼料源で あるこ とが確 認でき た.
保存 性 を向 上 させ る た めの サ イレ ー ジ化 試 験で は ,予 備 試 験に お いて 乳 酸菌 等 添 加し な くて も 密封 す るの み でサ
イレージ 調製が 可能で あり1年 間程度 の保存 性も付 与でき ることを 確認し ,現場 段階に おける ビニー ル袋等 を利用
する簡易 な方法 でも良 質サイ レージ が調製 可能で11月以 上 の保存性 を付与 できる ことが 確認で きた.
1.
はじめに
安全性 の確認 された 人間の 食品由 来であ り貴重 な有機
物資源で ある食 品残さ を飼料 という 有価物 に転換 させる
ことによ り,食 品製造 業にお ける食 品残さ 処理経 費の低
減,畜産 業界に おける 新規飼 料源の 確立及 び飼料 費の低
減,そし て循環 型社会 の実現 等が期 待でき る.
当セン ターで は県内 で発生 する食 品残さ につい て飼料
として利 用する ために 必要な 安全性 や栄養 成分等 の調査
を逐次行 うとと もに, 食品残 さの飼 料化で 最大の ネック
となる保 存性の 無さも 畜産現 場で飼 料作物 の保存 に広く
使われて いるサ イレー ジ化技 術を活 用する ことで 改善で
きること を明ら かにし てきた .
今回は ,大麦 若葉エ キス抽 出時に 発生す る大麦 若葉粕
(年間発生量500t程度) の飼料 化につ いて検 討を行 った.
2.
実験方法
大麦若 葉粕の 飼料と しての 安全性 や栄養 成分等 の確認
のため成 分特性 等の調 査を行 うとと もに, サイレ ージ化
による保 存性向 上につ いて検 討を行 った.
(1) 成分 特性等 の解明
発生 直 後 の大 麦 若葉 粕 をサ ン プ リン グ し, そ の まま 又
は-20℃以 下で冷 凍保存 後解凍 したも のを試 料とし ,物理
的特徴 の観 察及 び調 査, 有害 成分,栄養成分,無機 成分
の調査を 行った .
調査方法 は前報 の方法 にて行 った.
(2) サイ レージ 化試験
サイ レ ー ジ化 試 験は 予 備試 験 と して パ ウチ 法 に よる 試
験を行い,その後 現場段 階にお ける実 証的試 験を行 った.
パウ チ 法 によ る 試 験は ,T able 1 の 設 定に よ り 調製 し
た混合物 を真空 包装用 の袋に約50 0gずつ入 れ,軽 く脱気
後密封し25 ℃及び 屋外に て保管し ,Tabl e 2によ りサイ
レージの 品質調 査を行 った.
現場 段 階 (N 社 )に お ける 実 証 的試 験 は, フ レ コン バ
ッグに入 れた 50 0L 容 ビニー ル袋に 大麦若 葉粕を 詰め込
み,掃除 機で軽 く脱気 し密封 したも のを屋 内に保 管する
ことでサ イレー ジを調 製し, 調製し たサイ レージ の品質
調査をTable 3により 行った .
Table 1 大麦若 葉粕サ イレー ジ試験 区設定 (予備 試験)
1区 大麦若 葉粕 2区 大 麦若葉 粕+乳 酸菌 3区 大麦若葉 粕+乳 酸菌+ 繊維分 解酵素
4区 大麦若 葉粕+ フスマ( 目標水分6 0%)(85 .4:14.6 ) 5区 大麦若葉 粕+オ ーツヘ イ(〃) (85.0 :15.0)
注1 水分含 量 大 麦若葉 粕 68.3% ,フスマ 11.3%,オーツヘイ 13.0%
Table 2 保管期 間及び 測定項 目(予 備試験)
保管期間 25 ℃-2週間 屋 外(ベラ ンダ) -1月,8月
測定項目 官能 検査( 色,臭 い等), 乳酸菌 数,pH ,VBN, 全N,有機酸 量(乳 酸,酢酸 等),V -スコ ア点数
注1 官能検 査は前報の方 法により行った.
注2 V-スコア点はVBN/TN,発生有 機酸量を基に算 出した.
<現場 段階に おける 実証試 験 詰 込風景( H21.4. 7)>
Table 3 大麦若 葉粕サ レージ 品質の 調査時 期及び 測定項 目 (実証的試 験)
保管期間 1月,3月 ,6月,11月
測定項目 官 能検査( 色,臭 い等) ,乳酸 菌数,p H,VBN , 全N,有機酸 量(乳 酸,酢酸 等),V -スコ ア点数
3.
実験結果及び考察
(1) 成分 特性等 の解明
大麦若葉 粕の成 分特性 等は次 のとお りであ った.
a 物理的 特徴
物理的 特徴は Table 4 のと おり. 密度は 非常に 軽く,
嵩張るこ とが欠 点だと 考えら れた. 水気は 握れば 水分を
感じる程 度であ った.
b 有害成 分含量
今回 調 査 した 有 害成 分 の含 量 は いず れ も飼 料 中 有害 物
質の指導 基準値 未満で あり, 今回の 調査範 囲内に おいて
飼料とし ての安 全性に 問題は 見られ なかっ た.( Table5)
c 栄養成分含量
水分含量 は 68.3 %とサ イレー ジ化す る上で 水分調 整し
なくても 良い程 度であ った. 乾物中 の成分 含量は イタリ
アンライ グラス より粗 繊維で 高く, 粗蛋白 ,粗脂 肪,粗
灰分で低 くはな ったが ,一定 程度の 栄養成 分が含 まれて
いること が確認 できた .(Tabl e 6)
d 無機成 分含量
無機成 分含量はT able 7の とおり であっ た.特 に特徴
的な成分 は認め られな かった .
Table 4 物理的 特徴
残さ名 外 観 , 色 臭い等 密度 (kg/ m
3 ) pH
大麦若葉 粕
長さ1 ~2c m以内 の細 い繊 維状 のも の.
繊維のマ ット. 色は緑 色.
青汁の臭 い 299 5.67
Table 5 有害成 分含有 量 単位 :ppm
残 さ
硝酸態 鉛 カド ミウム ヒ素 セ レン
窒素 (P b) (C d) (As) ( Se)
乾物中 乾物 中/ 原 物 中 乾 物 中/ 原物 中 乾 物中 /原 物 中 乾 物 中 /原 物 中
大麦若 葉粕
飼料中 有害物 質
の指導 基準値 等
176 0.0 /0.0 0.0 /0.0 0. 0/0.0 0. 1 /0.02
1,000 3.0 1.0 2. 0 要 求 量:0.1~ 0.3
過 剰 障害: 5 <
1.0E+00
1.0E+03
1.0E+06
1.0E+09
25
℃
2
W
1
M
8
M
1
区
2
区
3
区
4
区
5
区
Table 6 一般成 分含量 単 位 :%残 さ 水 分 粗蛋白 粗脂 肪 N FE 粗繊維 AD F N D F 粗灰 分
大麦若葉 粕
<参考>
イタリアンライク ゙ラス
1番草・出穂 期
トウモロ コシ
黄熟期
68.3 3.3 0. 7 1 4.2 11.8 13. 6 23 . 3 1.8
10.3 2. 3 4 4.7 37.1 42. 9 73 . 4 5.6
84.7 2.1 0. 6 6.7 4.3 5. 0 8 . 8 1.6
13.7 3. 9 4 3.8 28.1 32. 7 57 . 5 10.5
72.9 2.1 0. 7 1 6.6 6.2 8. 0 13 . 1 1.5
7.7 2. 6 6 1.3 22.9 29. 5 48 . 3 5.5
注:上段は原 物中,下段は乾物 中
Table 7 無機成 分含量
食品残さ
カルシウム リン マク ゙ネシウム カリウム ナトリウム 鉄 銅 亜鉛 マンガン
Ca P Mg K Na F e Cu Zn Mn
(%) ( %) (%) (%) (%) (mg /kg) (mg/kg) (mg/kg) (mg/k g)
大麦若葉 粕 0.06 0 .07 0.02 0.41 0.01 1 7 0 5 4
0.18 0 .22 0.07 1.29 0.03 5 2 0 16 13
注:上段は原 物中,下段は乾物 中
以上 , 今 回の 試 験の 調 査範 囲 に おい て では あ る が飼 料
としての 安全性 が確認 される ととも に,一 定程度 の栄養
成分が含 まれる ことが 認めら れたこ とから ,大麦 若葉粕
が有用な 飼料源 である ことが 確認で きた.
(2) サイ レージ 化試験
① 予備 試験
a 官能検 査
25℃2 週間, 屋外1 月保 管では 色沢, 香味で 各区に 若
干差が見 られた が,8月保 管では 全区と も水分70% 以下,
pH4 以下 となり ,色沢 では保 管前の 鮮やか な緑色 が若干
褐変した ものの 黄緑色 を保ち,触感は さらっ として 清潔,
香味は甘 酸臭を 呈する 良質な サイレ ージで あり, 区によ
る差は認 められ なかっ た.(Fi g.1)
b 乳酸菌 数
全区とも 同様の 傾向を 示し,保管2週間で10 8
レベル ま
で増加し た後は 減少に 転じ8月後には10 1
レベル となっ
た.今回 の試験 では乳 酸菌添 加等に よる差 違は認 められ
なかった .(Fig. 2)
< 保管前 > <8月 保管後>
1区 1区 2区 3区 4区 5区
c pH
全区 と も 同様 の 傾向 を 示し た . つま り ,保 管 2 週間 程
度で良質サ イレージ の目安 である 4以下 となり ,以後 の変化
は見られ なかっ た.
また , 繊 維分 解 酵素 を 添加 し た 3区 が 他の 区 よ り若 干
低い傾向 を示し た.(Fi g.3)
d 揮発性 塩基態 窒素(V BN)/全 窒素(T N)
VBN量は混 合時8m g%以下 であっ たが, 保管に より増 加
し8月保管後には4区以 外で20~25 mg%, フスマ を混合
した4区で55mg%と なった .
その結果 ,混合 時1% 以下であ ったVBN/T N量 は8月 保
管で4区以外が3.6 ~4.4% ,4区が6. 7%まで 増加し たが,
不 良 サ イ レ ー ジ の 目 安 と な る 10% を 超 え た 区 は 無 か っ
た.(Fig .4)
e 有機酸 量(乳 酸,酢 酸,プロ ピオン酸 ,酪酸 )
乳酸発生 量は 2 5℃2週間保 管後に は全区 とも 2 %以上 と
なり,そ の後変 化は見 られな かった .
8月保管後で は繊維 分解酵 素を添 加した 3 区 が最も 多
かった.( Fig.5)
8 月保 管 後で も 不良 サ イレ ー ジ の目 安 とな る 乳 酸, 酢
酸以外の 有機酸 の発生 は全区 認めら れなか った.(F ig.6)
f V-ス コア
8 月保管 後の V- スコア 点数は全 区 90 点を 超えて おり,
大麦若葉 粕は単 独でも 密封す るだけ で良質 なサイ レージ
が調製可 能であ ること が確認 できた .(Fig. 7)
以上 よ り ,繊 維 分解 酵 素添 加 に よる 乳 酸生 成 量 の増 加
効果等が 若干認 められ たもの の,大 麦若葉 粕はた だ密封
するだけ でも良 質サイ レージ が調製 でき, 1 年間 程度の
保存性を 付与で きるこ とが確 認でき た.
Fig .3 大 麦若葉 粕サイ レージのpHの推移 Fig .4 大 麦若葉 粕サイ レージのV BN/TNの推 移
Fig.5 大麦若 葉粕サ イレー ジの乳 酸発生 量の推 移 Fi g .6 大麦 若葉粕 サイレ ージの8月保 管時の 有機酸発 生量
<現地 実証試 験 11月保 管後の サイレ ージ>
Fig.7 大 麦若葉 粕サイ レージ のV- スコア 点数の 推移 11月後 サイレ ージ表面 11月 後 サ イレージ 内部
注1 V-スコアは80点 以 上 で 良 , 60~ 80点 が 可 , 60点 以 下 が 不 良
② 現地実 証試験
11 月 保管し たサイ レージ では表 面か ら 5c m 程度 の深さ
まで変色 しカビ 等が発 生して いたが ,その 内部は 緑色の
良質なサ イレー ジであ った. この変 色やカ ビ等が 発生す
る現象は 脱気不 足やサ イレー ジ材料 中の残 留空気 等を主
際にも良 く見ら れるも のであ り,カ ビ等の 発生し た部分
を除去す ること で特に 問題は 無いも のであ る.
色 沢 , 香 味 , 感 触 と も 良 好 で あ り , 官 能 検 査 点 は 11
月後にお いても 40 点 満点中 34 点 と高点 数であ った.
(Table 8)
成分値 では ,pHは1月後に は良質 サイレ ージの 目安と
なる4以下とな り,11月後に おいて も乾物 率減少 はわず
かであり ,VBN 量,乳 酸以外 の有機 酸発生 が少な かった
ことからV- スコアは9 9.8点と非 常に高 点数で あった .
(Table 9)
以上よ り,大 麦若葉 粕にお いては 特に施 設,機 械等が
必要無い ビニー ル袋と フレコ ンバッ グを利 用する 簡易な
方法でも 現場段 階にお いて良 質なサ イレー ジが調 製可能
であり ,11月以 上の保 存性を 付与で きるこ とが確 認でき
た.
Table 8 大麦若 葉粕サ イレー ジの官 能検査 点の推 移(調製 日 H21. 4.7)
項 目(配 点) 1月後 3月 後 6月後 11月後
水 分(10 ) 8(74.7 ) 8(74. 8) 8(74 .0) 6(75.4)
pH (15 ) 1 5(3.59 ) 15(3.5 8) 15(3. 64) 1 5(3.65)
色 沢( 5 ) 5(A) 4(B) 4(B) 4(B)
香 味( 5 ) 4(B) 4(B) 4(B) 4(B)
感 触( 5 ) 5(A) 5(B) 5(A) 5(A)
計 (40 ) 3 7 36 36 3 4
( 注) 評 点(分 析値等)
Table 9 大麦若 葉粕サ イレー ジの成 分値等 の推移 (調製日 H21.4.7 )
単位 1月後 3月後 6月後 11月後
水分(原物 中)
pH
VBN
全窒素含 量
VBN/全N
(VBN関係V-SCORE点数
有 乳酸
機 酢酸
酸 プロピ オン酸
量 酪酸 以上 (C4以上)
(有機酸 関係 V- SCORE 点数
V-スコア
%
mg%
%
%
点
%
%
%
%
点
点
74.72 3.59 19.3 0.49 3.9 50.0 2.91 0.34 0.00 0.00 49.0 99.0 74.83 3.58 18.6 0.51 3.6 50.0 2.79 0.34 0.00 0.00 48.9 98.9 74.04 3.64 24.4 0.50 4.8 50.0 2.45 0.34 0.00 0.00 48.9 98.9 75.38 3.65 21.1 0.50 4.2 50.0) 1.66 0.22 0.00 0.00 49.8) 99.8
(参 考) V-ス コア(サイレージの評価基 準):80点以上 良,60~80点 可,60点以 下 不 良 計算 VBN/TN(%) ≦550点,5~1060 -2X点 ,10~2080-4X点 ,20< 0点 方法 酢酸+プロピオン酸(%) ≦0.210点,0.2~ 1.5(150-100X)/13 ,1.5< 0点
酪酸 以上のVFA(%) 0~0.540-80X点,0.5< 0点
4.
まとめ
県内 で 発 生す る 食品 残 さの 一 つ であ る 大麦 若 葉 粕の 飼
料化につ いて検 討を行 った.
(1) 物理 的特徴 の観察 及び調 査,有 害成分 ,栄養成分,
無機成分 の調査 を行っ た結果 ,密 度が299kg /m 3
と非常に
軽く嵩張 る欠点 も見ら れたが ,有害 成分含 量はい ずれも
飼料中有 害物質 の指導 基準値 未満で あり今 回の試 験の調
査範囲に おいて ではあ るが飼 料とし ての安 全性に 問題な
いことが 確認で き,一 定程度 の栄養 成分が 含まれ ること
が認めら れたこ とから ,大麦 若葉粕 が有用 な飼料 源であ
ることが 確認で きた.
(2) 保 存 性 の 向 上 を 検 討 し た サ イ レ ー ジ 化 試 験 の 予 備
試験にお いては 大麦若 葉粕に 乳酸菌 等添加 しなく ても密
封するの みでサ イレー ジ調製 が可能 であり ,1 年 間程度
の保存性 を付与 できる ことが 確認で きた.
現場 段 階 にお け るビ ニ ール 袋 等 を利 用 する 簡 易 な方 法
でも良質 なサイ レージ が調製 可能で あり ,11月間 以上の
保存性を 付与で きるこ とが確 認でき た.
(3) 大麦 若葉粕 の飼料 源とし ての有 用性が 確認で きたこ